映画『地下に潜む怪人』のネタバレ&考察を紹介します。
賢者の石を探す考古学者たちが足を踏み入れたのは、パリの地下に広がる巨大なカタコンベ。
そこは恐ろしい世界の入り口でした……。
賢者の石の正体とは?なぜ主人公たちは脱出できたのか?
そんなたくさんの謎が散りばめられた作品です。
『地下に潜む怪人』を見たけど謎が解決できなかったという人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
映画『地下に潜む怪人』の作品情報
The only way out is down. #AsAboveSoBelow pic.twitter.com/jiR8sX9fNu
— #AsAboveSoBelow (@AsAboveSoBelow) April 25, 2014
原題 | As Above, So Below |
タイトル | 地下に潜む怪人 |
監督 | ジョン・エリック・ドゥードル |
脚本 | ジョン・エリック・ドゥードル ドリュー・ドゥードル |
公開年 | 2014年 |
キャスト | パーディタ・ウィークス ベン・フェルドマン エドウィン・ホッジ ほか |
制作国 | アメリカ |
上映時間 | 93分 |
ジャンル | アドベンチャー ホラー |
映画『地下に潜む怪人』のあらすじ
逃げ場のないカタコンベ、そこは地獄への入り口だった。
錬金術の研究者であるスカーレットは、亡き父の意志を継ぎ、”賢者の石”を追い求めていた。
”賢者の石”を生み出したとされるニコラス・フラメルが残した暗号によると、それは巨大地下墓地・カタコンベに眠っているという。
さっそくカタコンベに侵入するスカーレットとその仲間たち。
しかし、そこは絶対に足を踏み入れてはいけない恐怖の場所だった……。
映画『地下に潜む怪人』の感想【ネタバレなし】
爽快な謎解きアドベンチャー!POV手法が生み出す緊張感!
タイトルを見て、地下で怪人に追い回されるゾンビ映画的なパニック・ホラーかと思ったのですが、違いました。
謎解きアドベンチャーと言ったほうがしっくりきます。
歴史や錬金術について豊富な知識を持つ主人公たちが暗号を解きながらお宝を探すお話です。
神話や古典文学の話がたくさん出てくるため、知識があるほうがより楽しめます。
知識がなくても主人公が一応説明してくれるから話はわかるよ。
ホラーという視点で見ると物足りなく感じるかもしれません。
謎解きアドベンチャーとして見ると、ほどよい緊張感と次々と暗号を解いていく爽快感があっておもしろいです。
未回収または情報不足の伏線が多数あるため、消化不良感があるのは否めませんが…。
考察好きにはたまらない映画です。
以下、ネタバレを含みます
主な登場人物とそれぞれが犯した罪
映画『地下に潜む怪人』の主な登場人物をご紹介します。
本作では登場人物が犯した「罪」がキーワードになるので、それぞれの罪も合わせて見ていきましょう。
スカーレット(演: パーディタ・ウィークス)
錬金術の研究者。
考古学や古典文学の知識も豊富です。
根っからの研究者で、知的好奇心のために周りを巻きこみます。
研究者としては立派ですが、人間としてはなかなかの厄介者。
<犯した罪>
精神を病んだ父からかかってきた電話に出なかったことを悔やんでいます。
映画冒頭、取材中に「父が精神的に不安定だったのでは」と問われ、過剰な反応を見せていました。
ジョージ(演:ベン・フェルドマン)
スカーレットの友人で、翻訳を通じて彼女の研究を手助けしています。
かつては恋仲だった様子。
閉所恐怖症なのにカタコンベに連れてこられてかわいそうな人。
<犯した罪>
幼い頃、弟が洞窟で溺れてしまいました。
助けを呼びに行く途中で迷子になってしまい、救助が間に合わなかったことを悔やんでいます。
ベンジー(演:エドウィン・ホッジ)
スカーレットを取材するカメラマン。
ふざけてジョージをカタコンベの中に突き落としますが、事情を聞いてすぐに謝っていたので悪い人ではなさそうです。
見た目は強そうですが、わりとすぐに取り乱してしまう人(あの状況なら仕方ない)。
<犯した罪>
詳細は不明。
女性に突き落とされて死亡することから、女性関係でトラブルがあったのだと思われます。
パピヨン(演:フランソワ・シヴィル)
カタコンベ内の案内役。
可愛い名前ですが、たぶんけっこうヤンチャなタイプ。
<犯した罪>
かつて何かしら彼の過失により自動車が炎上し、友人が亡くなってしまいました。
手のやけどについて触れてほしくないのはこのためです。
この亡くなった友人に見覚えがあると思ったら、洞窟ツアーでスカーレットたちにパピヨンのことを教えた人ですね。
スージー(演:マリオン・ランバート)
パピヨンの友人で、カタコンベの探索に同行します。
<犯した罪>
詳細は不明。
ラ・トープにより殺害されたことから、彼が関係しているのだと思われます。
ゼッド(演:アリ・マルヤル)
パピヨンの友人で、カタコンベの探索に同行します。
<犯した罪>
交際していた女性との間に子どもを授かりましたが、認知していません。
映画『地下に潜む怪人』の結末
カタコンベに侵入すると、次々に不可解な出来事が起こる。
不審に思いながらも暗号を解読し、ついに賢者の石を発見したスカーレットたち。
しかし、その直後に天井が崩れ、来た道を引き返せなくなる。
仕方なく先に進むことになったが、壁には「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」の文字。
先に進むにつれて不可解な出来事は増えていく。
スージー、ベンジー、パピヨンは亡霊によって殺害されてしまい、ジョージも大ケガを負う。
先ほど見つけた賢者の石が本物ではないと気づいたスカーレット。
本物の賢者の石を発見し、さらにカタコンベから脱出するには自らの罪を懺悔しなければならないと悟る。
スカーレット、ジョージ、ゼッドの3人はそれぞれの罪を告白し、カタコンベの底へ飛び込む。
底にフタのようなものがあり、それは外の世界に通じていた。
カタコンベを出ると、そこはエッフェル塔が目の前にそびえ立つパリの街だった。
映画『地下に潜む怪人』の感想【ネタバレあり】
スカーレットがどんどん暴走していくのを見ながら、「天才と変態は紙一重」というのはこういうことだなと思いました。
スカーレットとジョージがすごいスピードで暗号を解読していくのは、変な焦らしがなくてよかったです。
話がむずかしいから、ついていくのが大変。
ダンテの『神曲』をモチーフに進んでいく展開もいいですよね。
『神曲』の地獄は9層あるので、1層ずつその階層にちなんだ罪を犯した人が殺されるのかな、などと深読みをしてしまいました。
が、そんなことはありませんでした。
そもそもスカーレット一行は6人のため、3人足りません。
いま何層目かな、と数えながら見ていましたが、もっと早く気づくべきでした…。
前半は犠牲者も出ず、意外とあっさり賢者の石もゲットしましたが、後半のたたみかけがすごかったです。
頭をぺちゃんこにされるスージー。
突き落とされるベンジー。
引き込まれるパピヨン。
そしてみんな大好き犬神家。
スージーとベンジーが何をやらかしたのか情報がないのが残念です。
後述しますが、クラブの入り口ですれ違った女性やカタコンベ内の椅子に座る人物など、ほかにも謎は多く残ります。
賢者の石にたどり着くまでの謎解きにはすっきりしたのですが、もう少し伏線を回収してもらいたかったです。
映画『地下に潜む怪人』の考察
映画『地下に潜む怪人』に散りばめられた伏線や謎についての考察を紹介します。
考察1:モチーフはダンテの『神曲』
賢者の石を探してカタコンベを探検するスカーレット一行。
そこで不可思議な現象が起こりますが、それらはダンテの『神曲』がモチーフになっています。
ダンテの『神曲』とは
『神曲』とは、ダンテ・アリギエーリによって書かれた叙事詩です。
『神曲』は地獄篇、煉獄篇、天国篇の3つから構成されています。
各篇は33の歌から成り、3行を1連とする「三行韻詩」という型が取られています。
おおまかな内容は以下の通りです。
地獄篇
地獄に迷い込んだダンテは、案内人のウェルギリウスとともに、過去の偉人や身近な人物に出会いながら地獄を巡ることに。
地獄は9層に分かれており、漏斗のような形で、地球の中心に向かって下へ下へと続いています。
その様子は画家・ボッティチェリの「地獄図」を見るとわかりやすいでしょう。
「地獄図(地獄の見取り図)」(1490年)サンドロ・ボッティチェッリ
引用:ART de DATE-ボッティチェリの「地獄図(地獄の見取り図)」を、迫って解説!
地獄の門には「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」と記されています。
作中でも登場したあの一文です。
死者は生前に犯した罪の種類によって、どの階層に行くかが振り分けられます。
そして振り分けられた先で罰を受けるのです。
ダンテたちが地獄の最深部に到着すると、そこは煉獄山の麓でした。
煉獄篇
煉獄山では、死者が生前に犯した罪を贖いながら上に登ります。
すべての罪を贖い、山頂にたどり着くと天国に行くことができるのです。
自らの罪を贖い、山頂に到着したダンテはウェルギリウスと別れて天国へ行きます。
天国篇
ダンテは天国にいるさまざまな聖人と出会い、神の愛を知ります。
映画『地下に潜む怪人』での描写
賢者の石を手にしたスカーレット一行は、「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」と記されたトンネルを見つけます。
そう、これは地獄の門なのです。
この先ではさまざまな現象が彼女たちを地獄へ引きずり込もうとしました。
エッフェル塔を逆さに映した本作のポスターは、ボッティチェリの「地獄図」を表現したものでしょう。
考察2:なぜスカーレットたちは脱出できた?懺悔する意味とは?
自らの罪を懺悔することでスカーレット、ジョージ、ゼッドは脱出することができました。
懺悔することにどのような意味があったのでしょうか。
その答えは『神曲』の煉獄篇にあります。
賢者の石を盗んでしまった罪を払うために、スカーレットがカタコンベを上へ上へと登って行く様子。
亡き父に懺悔する様子。
これらはまさに、煉獄篇でダンテが自らの罪を贖いながら煉獄山の山頂を目指す様子そのもの。
地上へ出る(=煉獄山の山頂へ登る)ためには自らの罪を贖う必要があったのです。
彼女たちは自らの罪と向き合い、懺悔したことで煉獄山の山頂へとたどり着くことができたのだと考えられます。
考察3:なぜゼッドは生き残ったのか?
スカーレットとジョージが生き残るのは映画の展開として理解できます。
ただ、失礼ながらゼッドも無事だったのはなぜだろうと感じる方も多いのではないでしょうか。
いかにも序盤でやられそうなタイプなのに…。
自分は「3人が取り残され、3人が生き残る」ということが大切だったのではないかと考えます。
考察1でご紹介した通り、ダンテの『神曲』では「3」という数字が重んじられています。
これはローマ・カトリックの教義「三位一体」を体現したものだそうです。
ダンテの『神曲』をモチーフにしているため、脚本でも「3」という数字にこだわったのではないでしょうか。
なぜゼッドが生き残るメンバーに選ばれたのかは不明です。
考察4:賢者の石の正体は?
スカーレット一行が手に入れた赤い賢者の石は偽物であることが判明します。
この偽の賢者の石は、見た目的には辰砂(硫化水銀の鉱物)ではないかと思います。
では、本物の賢者の石の正体とは何だったのでしょうか。
賢者の石とは、スカーレットが見つけた金色の丸い物体(金属?)のことでしょう。
賢者の石の力は、錬金術の思想を理解した者に与えられる、いわば“引き寄せの法則”のような力のことだと推測します。
偽の賢者の石を元の位置に戻し、金色の丸い物体を見つめるスカーレット。
そして何かに気が付いたように「下なるものは上なるものの如く、願えばそれは現実となる」と呟きながらジョージたちのもとへ駆け出します。
金色の丸い物体=賢者の石
賢者の石=願いを叶える力がある
「下なるものは上なるものの如く」
→賢者の石に宿る力は、賢者の石に映り込む自分の中にも宿っている
こうしてスカーレットは、金色の丸い物体に映る自分の中に願いを叶える力を見出したのかもしれません。
ジョージの怪我が治ったのも、キスすることに意味があったわけではなく、助かってほしいとスカーレットが願った結果なのでしょう。
スージーの傷が偽の賢者の石によって治ったのは、おそらく近くに本物の賢者の石があったからではないかと思います。
ちなみに、スカーレットが呟いている「願えばそれは現実となる」という言葉。
何かの引用だとは思いますが、引用元を見つけることはできませんでした。
「下なるものは上なるものの如く」はエメラルド・タブレットに書かれた言葉ですが、「願えばそれは現実となる」という内容は書いてありません。
もし引用元を知っている方がいらっしゃれば、教えていただきたいです。
考察5:謎の白い女性の正体は?
パピヨンに会うために訪れたクラブの入り口ですれ違った謎の女性。
意味ありげにカメラを見つめますが、彼女が何者だったのかは結局わからずじまいです。
カタコンベ内で歌う怪しい集団のなかにもいたように見えますが、同一人物かは判断できません。
ベンジーが突き落とされる直前に後ろを通る女性や、ベンジーを突き落とす女性、椅子に座る黒頭巾の人物とは別人のような気がします。
自分はこの謎の白い女性が亡霊ではなく、生きた人間であると考えます。
ラ・トープやジョージの弟のように亡霊であれば、忽然と姿を消すはずです。
洞窟ツアーで現れたパピヨンの友人も忽然と姿を消します。
しかし、クラブの入り口ですれ違ったこの女性は、階段のようなものを降りていく様子が最後まで映し出されていました。
この女性が何を意味していたのか、もう少し情報が欲しいところ…。
映画『地下に潜む怪人』の感想と考察まとめ
今回は、 映画『地下に潜む怪人』のネタバレ&考察を紹介しました。
さまざまな謎が隠された本作。
ダンテの『神曲』に当てはめて考えると、スカーレットの行動の意味が理解できました。
何度も見直すと、それまで気がつかなかった手がかりが見つけられるかもしれません。