映画『クリーピー 偽りの隣人』のネタバレ感想&考察を紹介します。
西島秀俊と香川照之の怪演が光る本作。
なぜ早紀は生き残ったのか?
ラストシーンの高倉の行動の意味とは?
気になったシーンを考察してみました。
本作のあらすじや作品に込められた謎を知りたい人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
映画『クリーピー偽りの隣人』の作品情報
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— 映画『クリーピー 偽りの隣人』 (@Creepy_2016) June 17, 2016
タイトル | クリーピー 偽りの隣人 |
監督 | 黒沢清 |
脚本 | 黒沢清 池田千尋 |
公開年 | 2016年 |
キャスト | 西島秀俊 香川照之 竹内結子 川口春奈 藤野涼子 東出昌大 ほか |
制作国 | 日本 |
上映時間 | 130分 |
ジャンル | サスペンス |
映画『クリーピー偽りの隣人』のあらすじ【ネタバレなし】
不審な隣人、奇妙な未解決事件。この違和感の正体は…
新居に引っ越してきた高倉夫妻。
近所へ挨拶に向かうが、隣人たちは無愛想でどこか気味が悪い。
ある日、元刑事で犯罪心理学者の高倉は、元部下からの頼みで6年前に起こった一家失踪事件の調査をすることになる。
調査を進める高倉だったが、隣人の西野の不審な行動に違和感を覚えるようになり……。
映画『クリーピー偽りの隣人』の感想【ネタバレなし】
終始、人の怖さを感じる映画でした。
香川照之演じる西野が怖いというか、ねっとりとした気持ち悪さを感じます。
登場人物の誰にも感情移入できなくて第三者の目線で見ていると、余計に各登場人物の違和感が見えてきて…。
サスペンスではありますが、ホラーに近いような感覚です。
それも洋画に多いびっくり系のホラーではなく、ゾクっとするジャパニーズホラー。
俳優陣の怪演がまたそれを増長させています。
最後まで「うわぁ…」と思いながら鑑賞しました。
以下、ネタバレを含みます
主な登場人物とキャスト
映画『クリーピー 偽りの隣人』の主な登場人物とキャストを紹介します。
高倉幸一(演:西島秀俊)
元刑事。現在は犯罪心理学を教える大学講師。
妻と愛犬のマックスと一緒に暮らしています。
愛妻家で、普段はおだやかな性格。
犯罪への探究心が強く、犯人・被害者を問わず執拗なまでに追い詰めてしまうことも。
西野雅之(演:香川照之)
高倉夫妻の隣人。妻と娘の3人暮らしだそう。
無愛想なふるまいを見せたかと思えば、急に距離を縮めてくるような変な人。
自分の手は絶対に汚したくないタイプ。
高倉康子(演:竹内結子)
高倉の妻。多忙な夫を献身的に支えています。
社交的で、愛想の悪い隣人たちともなんとかうまくやっていこうとします。
ただ、精神的にもろいところがあるようです。
本多早紀(演:川口春奈)
6年前の一家失踪事件の生き残り。
当時、早紀は修学旅行で不在だったため被害を免れました。
ショックのせいか、事件前後の記憶が断片的にしか残っていません。
澪(演:藤野涼子)
西野の娘。中学生です。
しかし、彼女の口から「西野はお父さんではない」と衝撃の事実が明かされます。
野上(演:東出昌大)
刑事だった頃の高倉の部下。
高倉なら早紀から事件の話を聞き出せるかもと思い、協力を依頼します。
映画『クリーピー偽りの隣人』の結末
映画『クリーピー偽りの隣人』のあらすじを結末までネタバレありで紹介します。
一家失踪事件の調査
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高倉は野上と一緒に、早紀から事件の話を聞くことにした。
彼女は事件前後の記憶があいまいになっていたが、最近になって少しずつ思い出してきたという。
事件が起こる少し前から彼女の両親と兄は、ある人物と親しくしていた。
そして、彼女自身もその人物を見たことがあるような気がするというのだ。
その話を聞いた高倉は、野上に事件が起こった本多家の隣人・水田家を調べさせる。
すると水田家の押し入れの中から、行方不明になっていた早紀の両親と兄、水田夫妻の遺体を発見。
これで事件は解決と思われたが、「早紀が見たある人物とは誰なのか?」という疑問が残った。
西田への違和感
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— 映画『クリーピー 偽りの隣人』 (@Creepy_2016) July 20, 2016
その頃、康子は隣人・西田との交流を深めていた。
最初は無愛想な西田だったが、病気の妻を支えるのに疲れているだけで、悪い人ではないと感じていたからだ。
しかし、西田が康子に近づいたのにはある思惑があった。
そして高倉が気づかないうちに、康子は西田に洗脳されていく。
一方、高倉は西田に対する違和感を拭えずにいた。
そんなある日、西田の娘・澪が「あの人(西田)はお父さんじゃない」と口にする。
高倉はその発言が気になったものの、ちょうどマックスを連れた康子と西田が現れたため、それ以上の追求はできなかった。
その後、高倉がマックスの散歩をさせていると、あることに気がつく。
一家失踪事件のあった本多家・水田家の位置関係と、自分たちが住む高倉家・西田家の位置関係がよく似ているのだ。
「早紀が見たある人物」とは西田なのではないか。
そう感じた高倉は、野上に西田について調査させることに。
すると、西田は早紀の父親と仕事関係でつながりがあったことが発覚。
しかも登録されている免許証の顔写真と、隣人の西田の顔は別人だった。
野上は西田のもとへ事情聴取に向かうが、火災に巻き込まれて亡くなってしまう。
結末
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— 映画『クリーピー 偽りの隣人』 (@Creepy_2016) November 14, 2016
その頃、康子は完全に西田の支配下に置かれていた。
薬物を投与され、依存状態に陥っていたのだ。
西田は6年前の一家失踪事件の首謀者だった。
本多家と水田家を崩壊させたあと、「本物の西田家」を乗っ取り、自分が西田として何食わぬ顔で生活していたのだ。
ただし、西田自身は絶対に自分の手を汚さず、殺害や遺体の処理は「本物の西田」の妻と澪にやらせている。
西田の支配下に置かれた康子も、澪に巻き込まれる形で遺体の処理を手伝わされるのだった。
康子を連れ戻すため、西田家に乗り込んだ高倉。
しかし、康子から例の薬を打たれ、抵抗する力を失ってしまった。
西田は新しい家を探すべく、高倉・康子・澪・マックスを連れて車を走らせる。
しばらくして車を止めると、「新しい家を見つけた」と笑顔を見せた。
次の家では高倉夫妻と西田が従兄弟という設定に決めたが、マックスは連れて行けないという。
西田は高倉に銃をわたし、マックスを始末するように命じる。
ところが、高倉は西田に向けて銃を発砲。
澪は西田の遺体を見て「ザマアミロ」と乾いた声で笑う。
高倉はむせび泣く康子を強く抱きしめるのだった。
映画『クリーピー偽りの隣人』の感想【ネタバレあり】
西野だけでなく、みんな怖すぎました。
最初から高倉夫婦がなんか変なんですよね。
どこか距離があるというか、よそよそしいというか‥。
犬のマックスだけがこの映画の救いです。
西野に殺されちゃったらどうしようかと思いましたが、最後までちゃんと元気でした。
マックスが無事で本当によかった…。
西野が撃たれたあとの澪の反応も怖すぎました。
一家を支配され、後始末までさせられていた澪ですが、彼女はまだ中学生。子どもです。
それなのに撃たれた西野を見てうれしそうに笑って「ザマアミロ」なんて…。
普通では考えられない反応です。
作品の全体を通してまとわりつくような恐怖を感じました。
人の弱みにつけ込んで、洗脳して、操る。
そんな事件の報道を聞くことがありますが、こんな人が身近に潜んでいるとしたら恐ろしいです。
映画『クリーピー偽りの隣人』の考察
映画『クリーピー偽りの隣人』で気になったシーンを考察しました。
考察1:「クリーピー」なのは誰?
「クリーピー(creepy)」は、気味悪い、ゾッとする、という意味です。
映画のタイトルになっている「クリーピー」は誰のことを指しているのでしょうか。
それは主要登場人物全員のことでしょう。
西野は言うまでもありませんが、高倉、康子、澪、誰をとっても気味が悪いです。
高倉は犯罪について「おもしろい」「興味本意」「趣味」などと発言します。
大学の講義でアメリカでの凶悪犯罪について語る高倉は笑顔さえ見せています。
早紀にその人間性を疑われるほどの人物です。
康子は一見どこにでもいる主婦のようですが、一般的には考えられないような感覚を持っています。
引越しの挨拶に手作りチョコレートも持参する、
知り合って間もない隣人にシチューをお裾分けするなど…。
澪は西野の支配下にあるとはいえ、死体の後始末を平然とやってのけます。
そのうえ関係ない康子を後始末に巻き込むなど、罪悪感が欠如しているようです。
西野がクリーピーなのかと思いきや、登場人物全員がクリーピーなのが本作の怖いところです。
考察2:早紀はなぜ生き残ったのか?
6年前の一家失踪事件で唯一の生存者である早紀。
彼女はなぜ生き残ったのでしょうか。
修学旅行で留守にしていたことだけが理由ではないと思うのです。
あれほど周到な西野なら、修学旅行の日程を把握していなかったはずはありません。
わざわざ修学旅行の期間を狙って、早紀を生き残らせたのです。
それは早紀に事件の後始末をさせるためではないでしょうか。
西野は絶対に自分の手を汚したくない人間。
そう考えると、本多家と水田家が互いに殺し合うように仕向けたとして、その後始末をした人間がいたということになります。
その後始末をした人間が早紀なのです。
高倉が早紀に西野の写真を見せた際、早紀は「この人ではない」と言います。
しかし高倉が言っていたように、それまで顔を覚えていないと言っていた早紀が完全に否定するということは、思い出したということです。
では、なぜ早紀は否定したのでしょうか。
それは、自分が事件の後始末をしたことを思い出し、身を守るために嘘をついたのでしょう。
もし後始末をしていたことを警察に知られたら、ただでは済みませんからね。
早紀が事件の記憶を失ってしまったのは、自分が事件に関わってしまったという忌まわしい記憶を払拭したかったからなのかもしれません。
考察3:ラストシーンでの高倉の行動の意味は?
ラストシーンで西野に向けて発砲した後、銃弾がなくなっているにもかかわらず何度も引き金を引く高野。
もちろん、西野に恨みを込めて何度も引き金を引いたのだと捉えることもできます。
しかしそれだけではなく、澪に対して引き金を引いていたのではないでしょうか。
倒れた西野の前には澪がしゃがみ込んでいました。
そこに高倉が近づき、引き金を引いているのです。
西野を撃ちたかったのであれば、澪をどかせるでしょう。
ところが高倉は澪をどかせることなく引き金を引きます。
なぜ澪までも撃とうとしたのか。
それは妻の康子を巻き込んだことへの報復でしょう。
料理を通して西野と交流するきっかけとなり、康子を死体の後始末に巻き込んだ澪は、高倉からしてみれば同罪だったのかもしれません。
映画『クリーピー偽りの隣人』まとめ
今回は、映画『クリーピー 偽りの隣人』のネタバレ感想&考察を紹介しました。
人の怖さを描いた本作。
乾いた声で笑う澪、嗚咽を上げる康子、感情を失ったような高倉…。
救いのないラストが悲しい映画でした。