映画『MEN 同じ顔の男たち』のネタバレあらすじ&考察を紹介します。
夫の死の瞬間を目にしてしまったハーパー。
心の傷を癒すために訪れた田舎町で奇妙な男たちと出会う。
そして、不信感を募らせるハーパーに次々と恐ろしい出来事が襲いかかり……。
男たちが同じ顔をしている理由は?
ラストシーンはどういう意味?
気になったシーンを考察しました。
映画『MEN 同じ顔の男たち』を見たけどよくわからなかった人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
映画『MEN 同じ顔の男たち』の作品情報
🍎🍎速報🍎🍎
— シネマート心斎橋 (@Cinemart_Osaka) January 13, 2023
元夫が目の前で死んだ女性が🍎
心を癒すために訪れたイギリスの田舎町にある🍎
ホントに素敵なカントリーハウスで🍎
次々と不穏な恐怖に襲われる🍎
🍎『MEN #同じ顔の男たち』🍎
1月20日(金)より2週間限定上映決定‼#A24 が送る、美しく不思議な物語🍎
ぜひ劇場にてご覧ください🍎 pic.twitter.com/9DAKP7OVJw
原題 | MEN |
タイトル | MEN 同じ顔の男たち |
監督 | アレックス・ガーランド |
脚本 | アレックス・ガーランド |
公開年 | 2022年 |
キャスト | ジェシー・バックリー、ロリー・キニア ほか |
制作国 | イギリス |
上映時間 | 100分 |
ジャンル | ホラー |
映画『MEN 同じ顔の男たち』のあらすじ【ネタバレなし】
この町、何かがおかしい……。
目の前で夫を失ったハーパーは、傷ついた心を癒すために田舎町の屋敷を訪れた。
豪華な屋敷と美しい風景に満足したのもつかの間、奇妙な男たちと出会う。
さらに、不可解な出来事が次々とハーパーに襲いかかり……。
主な登場人物とキャスト
映画『MEN 同じ顔の男たち』の主な登場人物とキャストを紹介します。
ハーパー(演:ジェシー・バックリー)
夫を亡くした女性。
夫の死の瞬間を目撃してしまったことがトラウマになっています。
心の傷を癒すために、2週間ほど田舎町の屋敷で過ごすことにしました。
ジェフリー(演:ロリー・キニア)
ハーパーが滞在する屋敷の管理人。
面倒見のいい性格ですが、ひと言多いのが残念なところ。
ジェームズ(演:パーパ・エッシードゥ)
ハーパーの亡くなった夫。
自宅の上階から転落死しました。
映画『MEN 同じ顔の男たち』のあらすじ【ネタバレあり】
映画『MEN 同じ顔の男たち』のあらすじを結末までネタバレありで紹介します。
映画『MEN 同じ顔の男たち』が公開中。アレックス・ガーランド監督インタビュー。ホラーの「ヒロイン仕草」を疑う快作にして怪作https://t.co/ynOkIirlwL pic.twitter.com/j77oeoczLw
— GINZA (@GINZA_magazine) December 12, 2022
静かな田舎町での違和感
ある日、ハーパーは夫が自宅の上階から転落死する瞬間を目撃してしまう。
大きなトラウマを抱えた彼女は、休養のため田舎町の屋敷を訪れた。
屋敷の庭には、たくさんの実をつけたリンゴの木。
ハーパーはその実を手に取り、かじりつく。
屋敷の戸をたたくと、管理人のジェフリーが迎え入れてくれた。
彼は親切だが、なかなかの変わり者だ。
ハーパーは彼の余計な一言に苦笑いで対応するのだった。
ジェフリーが帰った後、ハーパーは友人のライリーとビデオと通話をはじめたが、電波が悪いらしい。
早々に通話を切り上げると、散歩に出かけた。
ひとりでいると、夫の死の瞬間やその直前にした口論のことをどうしても思い出してしまうのだ。
ーあの日、ハーパはジェフリーに別れ話をしていた。
しかし、離婚を受け入れないジェフリー。
離婚するくらいなら自殺すると言い出した。
ハーパーに罪の意識を植え付けるためだ。ー
屋敷の裏には森が広がっていた。
ハーパーは自然豊かな美しい景色に思わず笑顔になる。
奥へ進むとトンネルがあった。
自分の声を反響させてたのしんでいると、トンネルの向こうに人影が。
驚いたハーパーはあわてて逃げ出す。
しばらく走って後ろをふり返ると、少し離れた場所に全裸の不審な男が立っていた。
先ほどの人影は彼だ。
ハーパーはその男を無視して屋敷へ逃げ帰った。
男たち
翌日、ライリーと再びビデオ通話をしていると、昨日の不審者が屋敷の庭をうろついているのを見つけた。
ハーパーはすぐに警察へ通報するが、恐怖のあまりまた夫の死がフラッシュバックする。
ー口論のあと、ハーパーはライリーに「夫が怖い」とメッセージを送った。
それを見つけたジェームズは激しく怒り、言い争いはエスカレート。
そして、ジェームズは怒りにまかせてハーパーを殴り倒した。ー
まもなく警官が到着し、不審者は逮捕された。
そこで、ハーパーは気分転換のため散歩に出かけることに。
屋敷から少し歩いたところに教会があった。
礼拝堂の長椅子に腰かけると、再びあの日の記憶がよみがえってくる。
ー殴り倒されたハーパーは激怒し、「消えろ」とジェームズを責め立てた。
そして、謝罪しようとする彼を無理やり自宅から追い出すのだった。ー
教会を出ると、少年がかくれんぼに誘ってきた。
ハーパーはそんな気分になれないと断るが、少年はなおも食い下がる。
司祭がやってきて少年をたしなめると、彼は「消えちまえ」と捨て台詞を残して去っていった。
教会でハーパーの様子を見ていた司祭は、何があったのかたずねる。
ハーパーは夫が転落死したことを司祭に話した。
夫が上階から自宅へ入ろうとして足をすべらせたのか、飛び降り自殺をしたのかはわからない。
でも落下の瞬間、夫と目が合ったことが頭から離れない、と。
すると司祭は、「夫に謝る機会を与えていれば結果は違ったかもしれない」と語りかけた。
暗に夫の死はハーパーのせいだというのだ。
これに気分を害したハーパーはその場を立ち去った。
加速する恐怖
夕方、ハーパーがバーに入ると、居合わせたジェフリーが話しかけてきた。
そこへ昼間の警官がやってきて、不審者が釈放されたと聞かされる。
不審者は屋敷の庭のリンゴを盗んだだけで、無害だと判断されたからだ。
ハーパーが抗議しても警官は聞き入れてくれない。
(管理人も、不審者も、司祭も、ここまで出会った男たちは、なぜか全員同じ顔をしている。)
屋敷に戻ったハーパーは、これまでの出来事をライリーに電話で報告した。
失礼な男たちに怒ったライリーは、すぐに屋敷へ向かうという。
ところが、ハーパーが屋敷の住所を伝えようとしても電波が途切れてしまう。
地図を送ると、「居場所はわかっている、クソ女め」と不審なメッセージが返ってきた。
その瞬間、停電になり部屋中が暗闇に包まれる。
外へ様子を見に行くと、停電しているのはこの屋敷だけのようだ。
そこへ突然、男が絶叫しながら屋敷のほうへ走ってきた。
驚いたハーパーは屋敷へ逃げ込み、ドアを閉める。
ドアを激しくたたく音。
窓ガラスが割れる音。
ハーパーは恐怖に怯えて悲鳴をあげる。
すると、ドア越しにジェフリーが「大丈夫ですか?」と声をかけてきた。
悲鳴と物音を聞いて駆けつけてきたらしい。
ハーパーが「誰かが近くにひそんでいる」と言うと、彼は「屋敷の外を見まわる」と言い出した。
ハーパーもおそるおそるついて行くことに。
結末
ハーパーが外へ出ると、ジェフリーの姿がない。
その代わりに、目の前には昨日の不審者。
不審者がタンポポの綿毛に息を吹きかけると、そのうちの1つがハーパーの口のなかに吸い込まれていった。
その瞬間、トラウマがフラッシュバックする。
虚ろな表情で屋敷へ戻り、ドアを閉めるハーパー。
不審者がドアの郵便受けから腕をのばすと、その腕を包丁で切り裂いた。
いつの間にかハーパーの背後に教会で出会った少年の姿が。
彼は大きく切り裂かれた腕を見せながら、かくれんぼをしようと誘ってくる。
慌てて部屋へ逃げ込むと、同じように腕を切り裂かれた司祭がいた。
司祭はハーパーに性的な質問を投げかけながら迫ってくる。
ハーパーは司祭に包丁を突き刺し、かろうじて屋敷から逃げ出した。
そして車を発進させたところで、外にいたジェフリーをはね飛ばしてしまう。
ジェフリーは足を引きずりながら車を奪うと、ハーパーをめがけて急発進。
そのまま石柱にぶつかって停止した。
屋敷の庭へ逃げこんだハーパーだったが、先ほどの不審者と再び遭遇。
不審者の腹が大きくふくれ始め、絶叫を上げながら人間のようなモノを産み落とす。
生まれてきたのはあの少年だ。
すると、少年の腹もふくれ始め、腹を突き破って司祭が出てきた。
その後も同じように男から男が生まれていく。
最終的に生まれてきたのは夫のジェームズだ。
彼は自身の死についてハーパーを責め始めた。
ハーパーが「何を求めているの?」とたずねると、ジェームズは「愛だ」と答える。
それを聞いたハーパーはため息をつき、斧を握りしめた。
翌朝、ライリーが屋敷に駆けつけてきた。
彼女は妊娠中のようだ。
ライリーの到着に気づいたハーパーは、静かに微笑みを浮かべるのだった。
映画『MEN 同じ顔の男たち』の考察
映画『MEN 同じ顔の男たち』で気になったシーンを考察しました。
考察1:本作を通して描きたかったこととは?
田舎町でハーパーを襲う不可解な出来事の連続。
それらを通して描きたかったのは、”男”に対する女性の嫌悪感・恐怖ではないでしょうか。
ハーパーが出会った男たちは、みんなそろって女性を軽視しています。
- 失言をくり返す管理人
- 全裸で追いかけてくる不審者
- 暴言をぶつける少年
- セクハラ司祭
- 楽観的な警察官
見ているだけで思わずイラッとしてしまうような人物ばかりです。
これは”男”が女性を下に見ていることを表しているのでしょう。
旧約聖書によると、女性のイヴは男性のアダムから創られたといいます。
このことからキリスト教福音派の一部の解釈では、「男性は女性に従うべきである」(意訳)とされているんだとか。
だからハーパーが軽視されているのかな。
歴史をふり返ると、女性が抑圧されていた時代が長くありました。
かつてはあたりまえのように”男”が社会の中心だったのです。
夫、管理人(地主?)、少年(家の跡取りとして男児を産まなければならない?)、司祭、警察官…。
登場した”男”たちは、各時代の権力者や女性を苦しめた圧力を象徴しているようにも思えます。
こうした女性の苦しみを凝縮して映像化したのが本作なのです。
考察2:なぜ男たちは同じ顔なのか?
ハーパーが村で出会った男たちは、なぜ同じ顔だったのでしょうか?
それは、彼らが”男”という点では違いがないからです。
作中で彼らが同じ顔であることにハーパーが違和感を抱く素振りはありませんでした。
別人に見えていたのか、単に気づいていなかったのかはわかりません。
ただ、彼らは全員ハーパー(女性)に不快な思いをさせる”男”という存在。
それは大人でも少年でも変わりません。
ハーパーは彼らを等しく”男”と認識しているため、顔などどうでもいいのです。
ちなみに原題は『MEN』ですが、邦題では『同じ顔の男たち』がつけ加えられています。
個人的には、この邦題は余計だったのではと思っていて…。
何も知らずに観て、自力で「みんな同じ顔なのでは?」と気づいたほうがゾクッとしたんじゃないかなと思います。
邦題では盛大にネタバレされているからね。
とはいえ、ロリー・キニアの演じ分けが見事だったので、この邦題がないと気づく人は少数派だったかもしれないですね。
考察3:ラストシーンの意味とは?
腹や背中を突き破り、次々と生まれてくる”男”たち。
ラスト20分は衝撃的なシーンの連続でした。
このあまりにも異様な光景は何を意味しているのでしょうか?
次々と“男”たちが生まれる様子は、長年、何代にもわたって”男”という存在が変わらなかったことを表しているのだと思います。
どれほど時代が変わっても、”男”は変わらず横暴で、女性を軽んじ続けてきたのです。
しかも、“男”を横暴にさせたのもまた”男”なのかもしれません。
息子は父親を見て育ち、同じように”男”として成長してきたのですから。
それはまさに次々と生まれる”男”たちのように、クローンのように…。
そして、ハーパーの口のなかにタンポポの綿毛が入る描写は着床を意味しているのでしょう。
ハーパーは出産の疑似体験として、”男”が生まれてくる様子を見ているのです。
自分が女性を苦しめる”男”を生んでしまうのか。
もし娘がいたとしたら、娘も同じように”男”に苦しめられるのか。
そう考えると出産とは恐ろしく苦痛なものです。
めでたいはずの出産がなぜこれほどグロテスクに描かれているのでしょうか。
それは、旧約聖書の『創世記』に関係しています。
『創世記』3章16節に書かれている内容は以下のとおり。
女にはこう言われた。「わたしは、あなたの苦しみとうめきを大いに増す。あなたは苦しんで子を産む。」
引用:【新改訳2017】創世記3章16節
つまり、イヴが禁断の果実を食べるという罪を犯したため、出産の苦しみが増したということです。
これを可視化した結果、このようにグロテスクな描写になったのでしょう。
ちなみにセイヨウタンポポは、受粉しなくても自分のクローンを作って子孫を残す力を持っているんだとか。
極端な話、花粉を作る”おしべ(雄)”は必要ないということです。
それなのに自力では子孫を残せない”男”がクローンを作る描写は皮肉が効いています。
グロテスクな出産の果てに現れたのはジェームズ。
彼はハーパーに「愛」を求めます。
それに対して冷めた表情を浮かべるハーパー。
怯えた様子を見せないのは、これまでの出来事からある種の悟りを開いたからでしょう。
“男”が乱暴で、女性を苦しめるのはこれからも変わらない。
それなのに女性に対して「愛」を求める。
あまりにも幼稚で身勝手ではないか。
とはいえ、女性であるハーパーには為す術がないのだ、と。
苦しみを断ち切る唯一の希望は、手に持った斧だったのかもしれません。
作中では描かれていませんが、きっとジェームズに向けて斧を振り下ろしたのだろうと思います。
その後、車を飛ばして駆けつけてくれたライリー。
ただ愛を求めるだけの”男”(ジェームズ)とは対照的に、他人(友人)を思いやる女性として描かれています。
その彼女が妊娠中だったことには驚きですよね。
あの衝撃的な増殖シーンの直後だからね…。
ライリーのお腹の子の性別は明かされていません。
もしその子が”男”だったら……。
さっき目の当たりにした悪夢がよみがえります。
そして、悪夢を断ち切るためにハーパーは再び斧を振り下ろすのでは……。
そんな想像さえできるような、余韻が残る終わり方でした。
映画『MEN 同じ顔の男たち』の感想【ネタバレあり】
見終わったあとの率直な感想は「気持ち悪い」。
とにかく気持ち悪さがねっとりと絡みついてくる感覚でした。
たぶん観客を気持ち悪がらせることが監督の狙いのひとつだと思うので、してやったりなのではないでしょうか。
豪華な屋敷、自然豊かな森、きらめく光…。
特に前半はきれいな映像が続きます。
しかし、そこへ登場する管理人、不審者、少年、司祭、警察官…。
誰もかれも気持ち悪いのです。
映像がきれいだからこそ、その気持ち悪さが引き立ちます。
よく言われていますが、ラスト20分はグロ&キモがこれでもかというほど詰め込まれていました。
恐怖に怯えるというより、思わず引いてしまう感じですね。
内容としては、これまたよくわからない。
わかるっちゃわかるけど、なんかよくわからない。
そんな感じです。
ここまでいろいろ考察してきましたが、結論は「よくわからない」になりました(笑)。
もしかしたらそこまで意味を考える必要はなく、ただ気持ち悪いと思えばいいのかもしれません。
考えるな、感じろ、ということでしょうか。
ちなみに劇場公開時、友人から一緒に見に行こうと誘われたのですが、断りました。
A24配給のホラーは人と一緒に見るものではないと思ったので…(笑)。
鑑賞後、その判断は間違ってなかったと思いました。
決して本作が悪いわけではないんだけどね(笑)
映画『MEN 同じ顔の男たち』ネタバレ&考察まとめ
今回は、映画『MEN 同じ顔の男たち』のネタバレあらすじ&考察を紹介しました。
とても難解で、さまざまな考察を呼ぶ作品でしたね。
何度か見返してみると、新たな気づきがあるかもしれません。