洋画『マザー!』ネタバレ&解説!どういう意味?新作の詩の内容とは

一度見たら忘れられない強烈なインパクトを残すアメリカ映画『マザー!』。

「どういうこと?」「意味がわからない」と思った人も多いのではないでしょうか。

今回は、映画『マザー!』をネタバレありで解説します。

夫妻に次々と襲いかかる不可思議な出来事の意味とは?

映画『マザー!』の意味がよくわからなかったという人は、ぜひ本記事を参考にしてください。

目次

映画『マザー!』の作品情報

Mother!2017.jpg
By The poster art can or could be obtained from the distributor., Fair use, Link

原題Mother!
タイトルマザー!
監督ダーレン・アロノフスキー
脚本ダーレン・アロノフスキー
公開年2017年
制作国アメリカ
キャストジェニファー・ローレンス
ハビエル・バルデム
エド・ハリス
ミシェル・ファイファー ほか 
上映時間121分
ジャンルホラー

映画『マザー!』のあらすじ

もう誰も来ないで!崩れていく夫婦の日常

ある夫婦の家にやってきた1人の男。

拒む妻をよそに、夫は男を家へと招き入れることに。

そこから夫婦の家に次々と訪問者がやってきて、不可思議な出来事が起こっていく。

訪問者や彼らを招き入れる夫に対して我慢の限界を迎えた妻は…。

映画『マザー!』の感想【ネタバレなし】

メンタル崩壊注意!胸くそ映画界随一の破壊力

胸くそ悪すぎてストレスの塊みたいな映画です(褒め言葉)。

胸くそ映画として名高い本作は、破壊力と攻撃力が尋常ではありません。

見終わった後、しばらく何も手につきませんでした。

それほど心に深く突き刺さったのです。

余韻というか、もはや後遺症…。

予備知識がないと内容がむずかしいのですが、理解できなくてもとんでもない胸くそ悪さ。

理解できるとさらにもう一段階メンタルをえぐられます。

心に余裕のある元気な時に鑑賞するのがおすすめです。

以下、ネタバレを含みます

主な登場人物

映画『マザー!』の主な登場人物とキャストを紹介します。

ただ、本作では人物の名前が一切明かされていないので、「夫」や「妻」と表記しています。

夫(演:ハビエル・バルデム)

スランプに陥っている詩人。

気前がよく、見知らぬ訪問者でも家に招き入れてしまいます。

おおらかというか、無責任というか…。

スランプ克服後、彼の作品は大ヒットしました。

妻(演:ジェニファー・ローレンス)

焼けてしまった夫の家を大切にリフォームしています。

夫が次々と人を招き入れることには嫌気がさしている様子。

夫とはかなり年が離れているよ。

医者(演:エド・ハリス)

詩人である夫の大ファン。

夫婦の家に突然押しかけてきて、そのまま居座っています。

医者の妻(演:ミシェル・ファイファー)

これまた夫婦の家に突然押しかけてきて、そのまま居座っています。

いちばんやりたい放題の失礼な人。

映画『マザー!』の結末

夫婦の家にやってきた医者夫妻は、遠慮もせず、まるで我が家にいるかのように過ごしていた。

ある時、医者の妻が家主の書斎に忍びこみ、宝物を破壊してしまう。

その後、夫婦の家を突然訪ねてきた医者の2人の息子たち。

医者夫妻が弟ばかりを可愛がっていたため、兄は嫉妬して弟を殺害してしまう。

兄は逃走し、悲しみに暮れる医者夫妻。

夫妻の家で弟の弔いをすることになるが、やってきた人々は家の中をめちゃくちゃにする。

こうして、次々と現れる訪問者によって夫婦のおだやかな日常は崩れていくのだった。

そんななか、妻の妊娠をきっかけにスランプを克服した夫の詩は大ヒット

一躍有名人となった夫の元へ、マスコミやファンが押しかける。

最初はたのしく過ごしていたが、次第に人々の行動はエスカレート。

夫妻の家の中にあるものを奪い合い、争いに発展する。

もはや誰も手がつけられない混乱状態だ。

そんな状況で、妻はなんとか出産を終える。

ところが、生まれてきた赤ん坊が人々に奪われ、殺されてしまう

怒りの頂点に達した妻は家に火を放つ

夫は燃え尽きた家のなかから妻を運び出し、また新たな家を作るのだった。

映画『マザー!』の感想【ネタバレあり】

胸くそ映画なのは知っていましたが、想像以上でした。

何も救いがありません。

身勝手すぎる訪問者たちに終始不快な気分にさせられます。

ラスト15分の畳みかけがまた強烈!

最初は何が起こっているのかわかりませんでしたが、調べてみると作中での出来事が腑に落ちました。

訪問者たちが人類を表しているのだとわかると考えさせられます。

妻に感情移入しながら見ていたのですが、自分は訪問者側なのだと理解するとかなり辛かったです。

今まで見た映画の中で、ぶっちぎりでBADに落とされる映画でした。 

映画『マザー!』の解説&考察

映画『マザー!』はどういう意味なのかを解説します。

また、夫が書いた新作の詩の内容はどのようなものだったのか、考察しました。

 

解説&考察1:映画『マザー!』テーマはキリスト教

映画『マザー!』の根底にはキリスト教の思想があるとのことで調べてみました。

特に映画の前半は、旧約聖書の『創世記』がテーマになっています。

ここからは、『創世記』のおおまかな内容やキリスト教の思想と、映画での出来事を照らし合わせて解説します。

天地創造

<『創世記』のおおまかな内容>

創造主・神が7日間かけて世界を創りました。

映画冒頭の焼け焦げた家がきれいになり、そして妻が目覚めるシーン。

これは神によって地球が創造されたことを表しています。

詩人である夫は創造主・神であり、その妻は地球なのです。

夫の職業が小説家ではなく、詩人なのがいいよね。

壁を塗装する妻が緑と黄土色の塗料を塗って、少し満足げな表情を浮かべるシーン。

これは地球の大地を覆う木々と土を表現しているように感じました。

アダムとイヴ、失楽園

<『創世記』のおおまかな内容>

神によって創られたアダムと、アダムの肋骨から創られたイヴ

ヘビにそそのかされて禁断の果実を口にした2人は、初めて欲情し、性行為におよびます。

2人は神の怒りを買い、エデンの園を追放されてしまいました。

夫婦のもとを訪ねてきた医者と名乗る男とその妻。

医者の男はアダム医者の妻はイヴなのです。

嘔吐する医者の脇腹に見える傷痕は、神がイヴを創り出すために肋骨を取り出した時の傷でしょう。

妻の忠告を聞かずに2人は書斎に入り、夫が大切にしている宝物(=禁断の果実)に手を出します。

このことから夫(=神)の怒りを買い、書斎(=エデンの園)から追い出されてしまいました。

医者とその妻も書斎から追い出された後、性行為におよんでいる様子が映ります。

この描写も『創世記』の内容に沿っていたんだね。

また、医者の妻はやたらと子どもを産んで育てるべきだという発言をくり返します。

神がイヴを創り出した際、「産めよ、そして育てよ」と言ったそうです。

医者の妻が子どもにこだわるのは、それが自分の役目だと思っているからです。

カインとアベル

<『創世記』のおおまかな内容>

アダムとイヴの息子であるカインアベルは、神に捧げ物を献上します。

しかし、神は弟・アベルの捧げ物にしか興味を示しませんでした。

これに怒った兄・カインは弟を殺害してしまいます。

そのせいで兄・カインは追放処分とされますが、彼に対する報復行為は禁じられました。

夫婦のもとを訪ねてきた医者の2人の息子は、カインとアベルです。

医者夫婦は弟ばかりを可愛がっており、兄には愛情を注いでいません。

そのことに嫉妬した兄は、弟を殺害してしまいます。

 その後、兄はその場から逃走。

警察に突き出されるなどの報復は受けませんでした。

なんで兄を拘束しないんだろうと思ったけど、『創世記』でカインが報復を受けていないからだね。

大洪水

<『創世記』のおおまかな内容>

人間の堕落した姿を見た神は、洪水を起こし、人間を滅ぼします。

弟の弔いに集まったたくさんの人々。

夫婦の寝室に忍び込んだり、注意を聞かなかったり、身勝手な(=堕落した)ふるまいを見せます。

妻の怒りが頂点に達したとき、キッチンから大量の水が溢れ出し(=大洪水)、集まった人々は散り散りに逃げていきました。

イエス・キリストの誕生

<キリスト教の教え>

処女の聖母・マリアは、天使・ガブリエルから「イエス・キリストを妊娠した」とのお告げを受けます。

これを「受胎告知」といいます。

大洪水の後、子どもを授かった妻。

その子どもはイエス・キリストを表しています。

妻が直感的に妊娠を悟ったのは、天使・ガブリエルによる受胎告知のことでしょう。

これまで夫婦の間に夜の営みがなかったのは、聖母・マリアが処女であることに関係しているのだと思います。

実際にはそれだと懐妊できないから、大洪水後の一夜があったんだろうね。

人間同士の争い

インスピレーションを得た夫の新作は大ヒットし、一躍人気者となった彼のもとに人々が押し寄せます。

最初は食べ物を仲良く分け合っていましたが、次第に奪い合うようになっていく人々。

さらにはカルト的な集団も現れ、争いへと発展していきます。

この人々は人類を表し、こうした行動は人類の歴史を表しているのでしょう。

歴史のなかでも、さまざまな争いが絶え間なく起こっているからね。

妻が大切に作り上げた家(=地球)を勝手に塗り替え、家の中にあるものを当然のように享受し、破壊していきます。

そして自分達の手ではどうすることもできない状況にまできてしまうのです。

最後の晩餐とイエスの死

<キリスト教の教え>

ユダの裏切りによって、処刑されることとなったイエス。

処刑前に弟子たちと最後の晩餐がおこなわれました。

この時イエスは、パンを自分の体、葡萄酒を自分の血として弟子たちに与えたといわれています。

混沌とした状況下でなんとか出産を終えた妻。

人々から贈り物をわたされます。

これはイエスの誕生時に三博士が礼拝し、贈り物を捧げたことにちなんでいるのでしょう。

しかし、妻が眠っている間に赤ん坊は取り上げられ、無惨にも殺害されてしまいました。

人々が赤ん坊の血肉を貪る様子は、最後の晩餐を表現していると考えられます。

これはかなりショッキングなシーンだよね…。

ちなみに、本作は日本での劇場公開が中止されました。

赤ん坊を食べるというあまりにも衝撃的なシーンが影響しているのかもしれないですね…。

燃え尽きる家

我が子を失い、悲しみと怒りに満ちた妻は家に火を放ちます。

横暴な人類に対する大地の怒りなのでしょう。

すべて燃え尽き、何もなくなったところから、創造主である夫はまた地球を創り直します。

そしてきっとまた同じことがくり返されるのです。 

同じことのくり返しで、どんどん大地が弱っていきそう…。

時に自然は猛威をふるいます。

これは人類に対する警告なのかもしれません。

解説&考察2:新作の詩の内容は?

大ヒットした夫の新作の詩はどのような内容なのでしょうか。

さまざまな考察があるようですが、進化論的な内容だったのではないかと思います。

詩を読んだ妻は「あなたを失うの?」と言います。

これは進化論によって神の存在が否定されてしまうということではないでしょうか。

また、詩を読んでいる最中に螺旋階段が映ります。

これは生物の遺伝子を表しているのだと捉えることができます。

螺旋階段とゲノムの形は似ているよね。

実際、進化論をめぐってはさまざまな争いが起こっています。

夫婦の家にやってきた人々の争いも、詩の内容が発端となっていてもおかしくはありません。

ただし夫が「同じ詩を読んでも影響の受け方はそれぞれだ」と言っているように、さまざまな解釈ができるのでしょう。

映画『マザー!』の解説&考察まとめ

今回は、映画『マザー!』をネタバレありで解説しました。

創世記キリスト教の教えと照らし合わせると、作中の出来事に納得できますよね。

トラウマになりそうなほどの爪痕を残す映画でした。

もしかしたら、この地球が本作のような結末を迎える日もそう遠くはないのかもしれません。

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