ホラー映画『SMILE/スマイル』ネタバレあらすじ&感想・考察を紹介します。
患者の自殺現場を目撃してしまった医師のローズ。
それをきっかけに彼女は底知れぬ恐怖に支配されることとなり…。
不気味な笑顔を浮かべるのはなぜ?
生き残るにはどうすればいい?
気になったシーンを考察してみました。
『SMILE/スマイル』の内容や、作中ではっきりと明かされなかった謎について知りたい人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
映画『SMILE/スマイル』の作品情報
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原題 | Smile |
タイトル | SMILE/スマイル |
監督 | パーカー・フィン |
脚本 | パーカー・フィン |
公開年 | 2022年 |
キャスト | ソシー・ベーコン カイル・ガルナー ケイトリン・ステイシー ジェシー・T・アッシャー ほか |
制作国 | アメリカ |
上映時間 | 115分 |
ジャンル | ホラー |
映画『SMILE/スマイル』のあらすじ【ネタバレなし】
不気味な笑顔が呼び寄せた悪夢。これは現実か、幻覚か。
精神救急病院で働く医師のローズ。
ある日、患者が不気味な笑顔を浮かべながら自ら命を絶つ現場を目撃してしまう。
その日から彼女の周りで不可解な現象が起こるように。
頭にこびりついて離れない不気味な笑顔。
恐怖にむしばまれていくローズを待ち受ける結末とは……。
映画『SMILE/スマイル』の感想【ネタバレなし】
不気味な笑顔がトラウマに!底知れぬ恐怖がまとわりつくホラー映画!
本作を一言で表すと「不気味」です。
単純にびっくり・グロいというホラー映画は多いですが、本作はそれだけではありません。
得体の知れないものにじわじわと追い詰められていく気持ち悪さを感じます。
タイトルのとおり「笑顔」がとにかく怖いです。
特別グロいシーンはないのですが、俳優陣の表情が不気味すぎて…。
もし夢に出てきたら飛び起きてしまいそうです。
主人公のローズがセラピストという設定も絶妙。
精神を病んだ患者を診察してきた彼女が、これまでとは逆の立場になり…。
「医者のローズ」と「異常者として扱われるローズ」の対比が印象的です。
ストーリー展開は王道な感じですが、中盤にはサスペンスのような要素も出てきて飽きませんでした。
ゾワッとするようなホラー映画を見たい人におすすめです。
以下、ネタバレを含みます
主な登場人物とキャスト
映画『SMILE/スマイル』の主な登場人物とキャストを紹介します。
ローズ(演:ソシー・ベーコン)
精神救急病院に勤務する医師。
婚約者のトレバーと同棲中です。
幼い頃、自殺した母の第一発見者になったことがトラウマになっています。
ジョエル(演:カイル・ガルナー)
ローズの元恋人。
警察官で、ローズの患者が自殺した件の事情聴取にやってきました。
ジョエルは彼女にまだ未練があるようです。
ローラ(演:ケイトリン・ステイシー)
大学院生。
大学教授・ムニョスの自殺現場を目撃したことで精神的なショックを受け、病院へやってきました。
カウンセリング中、ローズの目の前で自ら命を絶ちます。
トレバー(演:ジェシー・T・アッシャー)
ローズの婚約者。
おだやかな性格ですが、面倒ごとを避けたがるタイプのようです。
映画『SMILE/スマイル』のあらすじ【ネタバレあり】
映画『SMILE/スマイル』のあらすじを結末までネタバレありで紹介します。
不気味な笑顔
ある日、医師のローズはローラという大学院生のカウンセリングを担当することになった。
ローラは大学教授・ムニョスの自殺現場を目撃したことで精神的に不安定になっているとのことだ。
ローラはひどく怯えた様子で、ほかの人には見えない何かが見えると訴える。
「それ」は人間のような見た目で、不気味な笑顔を浮かべているというのだ。
話すうちにローラは錯乱状態に陥り、不気味な笑顔を浮かべたまま割れた花瓶の破片で自らの首を切って命を絶った。
その後、ローズは警察の事情聴取を受けた。
刑事の1人は、偶然にもローズの元恋人・ジョエルだ。
患者のローラが目撃したムニョス教授の自殺現場は、かなり悲惨な状況だったらしい。
ムニョス教授はハンマーで自らを殴打し、なぜか笑顔を浮かべていたというのだ。
翌日、患者の1人が不気味な笑顔を浮かべながらうわ言を呟いている姿を目撃したローズ。
危険を感じて患者を拘束したが、上司からそれは過剰な処置だと判断されてしまう。
そして上司の勧めで1週間の休みをとることになった。
ローズが帰宅すると、突然家の防犯システムが作動し、警報が鳴り響く。
警備会社から電話がかかってきたため事情を説明。
すると、電話口の女性は「家に1人でいるのか?本当に誰も入れていないか?」と妙なことを言いはじめる。
「後ろを見て」と言われ、おそるおそる振り返ろうとしたそのとき、電話の着信音が鳴り響く。
持っていたはずの受話器がなぜか手元にない。
不思議に思いながらも電話に出ると、警備会社からの着信だった。
念のため警察に家のなかを確認してもらったが、特に異常はなかった。
しかし、飼い猫の姿が見えない。
異変、そして孤立
その夜、ローズはローラのカウンセリング時に録音した音声を確認していた。
会話の途中で何者かがローズの名前を呼んでいることに気がつく。
もう一度音声を再生すると、ローズのすぐ隣で何者かが名前を呼びながらしがみついてきた。
慌てて隣を見るが、「それ」の姿はない。
悲鳴を聞いてトレバーが駆けつけてくるが、ローズはパニック状態だ。
翌日、ローズはお世話になっているセラピストのもとを訪れた。
彼女は幼い頃に母親が自殺しており、トラウマを克服するためにかつてセラピーに通っていたのだ。
奇妙な現象が続くのは患者を目の前で失ったショックのせいだと考えたローズは、薬を処方してくれるようセラピストに頼む。
しかし、次回の診察で決めようと断られてしまった。
土曜日、ローズは甥の誕生日パーティーに出席することに。
精神的にまいっていたが、鏡の前で笑顔をつくる練習をして姉の家に向かった。
甥はローズからのプレゼントを開けた途端、表情がこわばる。
箱のなかに入っていたのは、ローズの飼い猫の死骸だったのだ。
その場は騒然。
ローズは「自分がやったわけではない」と弁解するが、パーティー客の1人が不気味な笑顔を浮かべているのを見てパニック状態に。
そのまま勤務先の精神救急病院へ搬送された。
退院したローズは、自分に起こっている異変をトレバーに説明しようとする。
患者のローラに取り憑いていた「それ」が自分の命を狙っているのだと。
しかし、トレバーはまともに取り合ってくれなかった。
連鎖
翌日、ローズは情報を集めるためムニョス教授の妻のもとを訪れる。
妻によると、ムニョス教授は不気味な笑顔を浮かべた「それ」に付きまとわれていたという。
彼の様子がおかしくなったのは、ホテルで女性の自殺現場を目撃したあとからだ。
話を聞いたローズはジョエルに協力を依頼し、事件を調べることに。
すると、ムニョス教授が目撃した女性も別の人物の自殺現場を目撃していたことがわかる。
帰宅したローズは、自身の異変と事件の関連性をトレバーに説明しようとする。
しかし、彼はローズが異常だと決めつけて口論に。
自宅を飛び出したローズは姉にも事情を説明するが、「精神を病んだママとそっくりだ」と聞き入れてもらえない。
結局2人は口論になり、ローズはますます追い詰められていく。
その後、ジョエルから事件についての連絡が入る。
同様の事件は20件起こっており、そのうち19人が自殺しているというのだ。
唯一の生き残りであるタリーは見ず知らずの女性を殺害した罪で刑務所に入っているという。
そこでローズとジョエルはタリーに会いにいくことにした。
タリーはジョエルを退室させると、ローズに事件のことを話しはじめる。
自殺が連鎖する事件は過去にもブラジルなどであったらしい。
生き残るにはほかの誰かを殺し、その現場を誰かに目撃させて連鎖を移すしかない。
「それ」は人のトラウマを力の源にしているというのだ。
ローズが帰宅すると、セラピストが様子を見にやってくる。
話をしていると、1本の電話が。
電話口の相手は目の前にいるはずのセラピスト。
目の前のセラピストは不気味な笑顔を浮かべてローズに迫ってくる。
結末
場面は切り替わり、ローズはなぜか勤務先の病院の前にいた。
ナイフを手に病室へ向かい、1人の患者を何度も突き刺す。
その現場を目撃した上司は、絶叫しながら自身の顔の皮を剥がすのだった。
……が、これはローズの幻覚。
実際には彼女は病院の前に来ただけだ。
パニックになったローズは車を走らせる。
ジョエルから電話がかかってくるが、「それ」の連鎖を止めるには人目を避けなければならない。
覚悟を決めたローズは電話を切り、廃墟と化した実家へ向かった。
夜になり、母の姿をした「それ」が現れる。
ローズは幼い頃、瀕死状態の母から助けを呼ぶように言われたが、怖くなって逃げ出してしまった。
そのせいで母を救えなかったのだと自分を責め続けているのだ。
「それ」は容赦なくローズに襲いかかる。
ローズは母のトラウマを克服しようと必死に抵抗。
「それ」に火を放ち、見事撃退した。
すべてを終えたローズはジョエルの家へ向かい、事件に巻き込んだことや、かつて一方的に別れを告げたことを謝罪する。
しかし、ジョエルの様子がおかしい。
目の前にいたのはジョエルの姿をした「それ」だったのだ。
慌ててジョエルの家を出ると、彼女はなぜかまた実家の前にいた。
そこへ本物のジョエルが駆けつける。
ローズはジョエルを目撃者にしないために実家へ駆け込み、鍵をかける。
なかには「それ」が待ちかまえていた。
「それ」はローズの口から体内へ入り込み、身体を乗っ取る。
ジョエルがドアを蹴破って侵入すると、そこにはオイルを頭からかぶったローズの姿。
そして彼女は不気味な笑顔を浮かべたまま、自らに火を放つ。
ジョエルはその壮絶な最期の目撃者となるのだった。
映画『SMILE/スマイル』の感想【ネタバレあり】
笑顔がこれほどまで怖い映画は初めてです。
笑っているのに…いや、笑っているからこそ異常さと恐怖が引き立つんですよね。
そして、何が現実で何が幻覚なのかわからない。
「それ」に取り憑かれたローズと同じように、見ている側も混乱状態になります。
警備会社からの1回目の電話や、セラピストの訪問が幻覚だとわかったシーンはゾッとしました。
びっくりする系の怖さと、疑心暗鬼による得体のしれない怖さのバランスがよかったです。
姉と言い争いになり、婚約者にも理解してもらえないローズ。
孤立していく姿が痛ましい…。
ローズ自身が医師ということもあり、よけいにつらかったんじゃないかなと思います。
ほかの人には見えない何かが見える。
序盤でそう訴える患者に、ローズは「わかるわ。幻覚はリアルに感じると思うけど、それは精神的ダメージやトラウマのせい」と語りかけていました。
患者がどれだけ状況を説明しようとしても、医者は「幻覚」の一言で片づけてしまうのです。
その道のプロである医者に相談したところで何の解決にもなりません。
だから婚約者に助けを求めるのですが、見放されてしまいました。
ラストシーンは、ローズが母のトラウマを克服して「それ」に勝利。
かと思いきや、それすらも幻覚。
笑顔を浮かべたまま自ら火を放ち、ジョエルを巻きこんでバッドエンドでした。
正直「それ」を倒して終わりだったら「うーん…」と思ってしまったのですが…。
実は幻覚で、連鎖は続くよっていう終わりでよかったです。
個人的にホラー映画はバッドエンドのほうが好きなんですよね。
燃えるローズを何ともいえない表情で見つめるジョエル。
…からの妙に軽快なエンドロール。
この落差は何なんでしょうか(笑)。
あと、「それ」は実体化させないほうが怖かったんじゃないかなって思いました。
ムニョス教授の絵みたいに、黒いもやもやで口だけが笑ってるみたいな感じでもよかったのかなと。
アップの「それ」、けっこう可愛い顔をしていましたよね。
映画『SMILE/スマイル』の考察
映画『SMILE/スマイル』で気になったシーンを考察しました。
考察1:なぜ笑顔なのか?
タイトルにもなっていますが、「それ」はなぜ笑顔なのでしょうか。
その理由は2つあると考えます。
1つ目は、目撃者に強烈なトラウマを与えるため。
「それ」の原動力は人間のトラウマです。
唯一の生存者・タリーが「できるだけ残酷な方法で」と言っていたので、おそらくトラウマが大きければ大きいほど力を得られるのだと思います。
「それ」に取り憑かれた人物は、不気味な笑顔を浮かべながら凄惨な死を遂げる。
そのあまりにも異様な光景は、目撃者にこれ以上ない強烈なトラウマを与えることでしょう。
そして、笑顔は日常のさまざまなシーンで目にするもの。
周囲の人々の何気ない笑顔が、目撃者をじわじわと追い詰めていくのです。
笑顔を見るたびに、自殺シーンを思い出してしまうんだね…。
2つ目は、自分が正常であることを示す仮面だから。
「それ」のせいで幻覚が見えるようになり、取り憑かれた人物は周囲から異常だと思われてしまいます。
だから笑顔を浮かべることで自分は正常だと示し、なんとか話を聞いてもらおうとするのです。
実際、ローズが誕生日パーティーに行く前、鏡の前で笑顔をつくる練習をしていました。
しかし、感情の伴わない笑顔を浮かべることがよけいに彼女を苦しめていたのかもしれません。
考察2:ローズは母のトラウマを克服すれば生き残れたのか?
ローズは母のトラウマを克服することで、生き残ったかのように思えました。
実際には「それ」を撃退できておらず、最終的に自ら命を絶ってしまうのですが…。
しかし、ローズは母のトラウマを克服したとしても生き残ることはできなかったのだと思います。
なぜなら「それ」を撃退することと、母のトラウマは無関係だからです。
たしかに「それ」はトラウマを介して人間に取り憑きます。
母のトラウマが力を増大させたのは事実でしょう。
ただし、「それ」がローズに取り憑いた原因は患者を目の前で失ったことへのトラウマ。
母のトラウマではありません。
このトラウマを克服したとしても、生き残ることはできなかったのです。
ローズが生き残るとしたら、誰かを殺して連鎖を移すか、患者を目の前で失ったトラウマを克服するしかないのでしょう。
とはいえ後者は現実的ではないので、やはり無関係の人を殺すしか生き残る方法はないのかもしれません。
映画『SMILE/スマイル』のネタバレ&感想・考察まとめ
今回は、ホラー映画『SMILE/スマイル』ネタバレあらすじ&感想・考察を紹介しました。
不気味な笑顔が強烈なインパクトを与える本作。
ポジティブな感情を表すはずの笑顔がまさかホラー映画の題材になるとは思いませんでした。
びっくりだけじゃない、心理的に追い込まれる系のホラー映画を見たい人におすすめです。