映画『マッドタウン』のネタバレ&考察を紹介します。
水も食糧もない無法地帯の砂漠の放りこまれたアーレン。
行き着く先は食人族か薬漬け集団か。
極限状態で彼女が下す決断とは…?
世紀末のような独特な世界観が魅力的な作品です。
映画『マッドタウン』を見たことがない人も、より詳しく知りたい人も、本記事をぜひ参考にしてください。
映画『マッドタウン』の作品情報
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原題 | The Bad Batch |
タイトル | マッドタウン |
監督 | アナ・リリー・アミルポール |
脚本 | アナ・リリー・アミルポール |
公開年 | 2017年(日本ではNetflix限定配信) |
キャスト | スーキー・ウォーターハウス ジェイソン・モモア キアヌ・リーヴス ジム・キャリー ほか |
制作国 | アメリカ |
上映時間 | 119分 |
ジャンル | SF |
映画『マッドタウン』のあらすじ【ネタバレなし】
食人か薬漬けか。無法地帯の砂漠で手足を失った少女の選択とは?
近未来のアメリカ・テキサス州。
社会に貢献しない人間は「バッド・バッチ」と呼ばれ、荒れ果てた無法地帯の砂漠に送りこまれる。
その砂漠で生活しているのは、「食人族・ブリッジ」と「薬漬け集団・コンフォート」という2つの共同体だ。
ある日、「バッド・バッチ」の烙印を押され、砂漠に放りこまれたアーレン。
ブリッジに捕まり、右の手足を切断されてしまった。
このままブリッジの餌食になるか、コンフォートで薬漬けになるか。
悪夢のような2択を迫られたアーレンが最後に行き着く先とは……。
映画『マッドタウン』の感想【ネタバレなし】
ユニークな設定と映像美が魅力!ただ、少々物足りなさも…
舞台は水も食糧もない極限状態の砂漠。
マッドマックスのような世界観だなと思いました。
冒頭の15分間はかなりワクワクする展開です。
ショッキングなシーンもあり、ヤバい雰囲気を醸し出しています。
ただ、それ以降の展開は全体的にスローテンポ。
個人的にはもう少し展開の起伏があったほうがたのしめたかなと思いました。
設定はとてもおもしろいので少し残念です。
印象的だったのは、映像の美しさと音楽の使い方。
ミュージックビデオのような美しいシーンがたくさんありました。
セリフが少ないぶん、映像と音楽が際立つんですよね。
あと、キャストがとても豪華です。
ジェイソン・モモア、キアヌ・リーブス、ジム・キャリー。
そんなに有名な映画ではないと思うのですが…。
豪華キャストが出演していることに驚きです。
ちなみに冒頭以外でショッキングなシーンはありません。
『グリーンインフェルノ』的なカニバリズム映画を求めている人には物足りないかもしれないです。
以下、ネタバレを含みます
主な登場人物とキャスト
映画『マッドタウン』の主な登場人物とキャストを紹介します。
アーレン(演:スーキー・ウォーターハウス)
「バッド・バッチ」として砂漠に送りこまれた若い女性。
砂漠に入った直後、食人族のブリッジに襲われ、右の手足を失ってしまいました。
過酷な環境で生き延びようと、懸命にもがいています。
マイアミマン(演:ジェイソン・モモア)
食人族・ブリッジの一員。
妻と幼い娘・ホニーと一緒に暮らしています。
ハバナから不法滞在をしていたため、「バッド・バッチ」の烙印を押されました。
絵を描くのが得意。
ドリーム(演:キアヌ・リーブス)
薬漬け集団・コンフォートの人々から絶大な支持を集めるリーダー。
たくさんの若い女性たちを妻としてはべらせています。
ハーミット(演:ジム・キャリー)
ブリッジにもコンフォートにも属していない放浪者。
アーレンやケガをしたマイアミマンを助けてくれます。
映画『マッドタウン』のあらすじ【ネタバレあり】
映画『マッドタウン』のあらすじを結末までネタバレありで紹介します。
食人族・ブリッジと薬漬け集団・コンフォート
ブリッジの拘束からなんとか脱出したアーレンだったが途中で力尽き、気を失ってしまう。
そこへハーミットが現れ、彼女をコンフォートの町まで運んだ。
5ヶ月後、アーレンはコンフォートの人々のおかげで回復し、義足も手に入れた。
しかし、右腕を失ってしまった悲しみは癒えない。
アーレンは銃を手にとり、コンフォートの町を抜け出した。
一方、ブリッジの集落では、マイアミマンが妻と娘のホニーとともに人肉を食らっていた。
妻は人肉をむさぼる生活にうんざりした様子。
ブリッジの人々は生きるために仕方なく人間を襲っているだけで、好んでやっているわけではないのだ。
家族が生きていくために、マイアミマンは人間を手にかけるのをやめない。
アーレンが砂漠をさまよっていると、有機廃棄物の山でマイアミマンの妻とホニーに遭遇する。
親子がブリッジの人間だと気づいたアーレンは、手足を失った報復として妻を射殺。
さすがに小さな子どもまで殺すことはできず、ホニーをコンフォートの町に連れて帰ることに。
その途中で、ホニーはアーレンに1羽のうさぎを買ってもらって可愛がった。
出かけたまま帰ってこない妻と娘を探すマイアミマンは、有機廃棄物の山で妻の遺体を発見する。
その近くにいたハーミットに娘の行方をたずねると、彼は「コンフォートを探せ」と答えた。
マイアミマンとの出会い
夜、コンフォートの町ではDJパーティーがおこなわれていた。
リーダーのドリームは人々にドラッグを与え、盛り上がりはさらにヒートアップ。
ドラッグを口にしてハイになったアーレンは、ホニーとはぐれてしまった。
ホニーを探すうちにコンフォートの町から遠く離れ、そのまま眠ってしまう。
そんなアーレンを発見したマイアミマン。
コンフォートの町まで送る代わりに、中で娘を探し出すよう取り引きを持ちかける。
見つからなければ殺すと脅されたアーレンは、しぶしぶ取り引きに応じることに。
2人が行動をともにするうちに、マイアミマンの意外な一面を知ることになる。
男にさらわれそうになるアーレンを救ったり、砂嵐からかばったり…。
やさしい一面もあるのだ。
その夜、2人が野宿していると、突然1人の男がマイアミマンを銃で撃つ。
そのままバイクでアーレンをコンフォートの町まで連れて行った。
男はアーレンがブリッジに襲われていると思い、助けてくれたのだ。
マイアミマンのことが気になったアーレンは、野宿していた場所を見にいくが、彼の姿はない。
たくさんの動植物や娘の絵が描かれたメモ帳だけが残されていた。
彼の娘を思う気持ちは本物なのだ。
その絵を見たアーレンは、ホニーを探し出すことを決意する。
すると、ドリームの妻たちと一緒に歩いているホニーを発見。
ドリームは自分の屋敷でホニーをかくまっているようだ。
結末
アーレンがドリームの屋敷を訪ねると、ドリームはさまざまなことを語り始める。
コンフォートの町の下水道の整備。
食物の栽培。
経済を回すためのドラッグの製造。
ドリームはこの町に大きく貢献してきた。
薬漬け集団のコンフォートだが、彼らなりの正義があるのだ。
ひと通りの話を聞いたうえで、アーレンはドリームの妻を人質にとり、ホニーの解放を要求する。
ドリームは要求に応じ、ホニーに「うさぎを大事にしろ」と言って解放した。
コンフォートの町を出た2人は、マイアミマンと再会。
娘を連れて立ち去ろうとするマイアミマンに、アーレンは自分も連れて行ってほしいと頼む。
マイアミマンはそれを拒否するが、アーレンの決意は固かった。
その後、ホニーが「お腹すいた」と言うので、彼女が連れていたうさぎを焼いて食べる。
可愛がっていたうさぎが焼かれるのを見て泣くホニーをなぐさめながら、アーレンとマイアミマンは微笑み合うのだった。
映画『マッドタウン』の感想【ネタバレあり】
映画冒頭、砂漠の入り口に「これより先、米国政府は一切関与しない」と書かれた看板が出てきます。
犬鳴村のような文面にワクワクするよね。
アーレンはあっという間にブリッジに捕まり、意識があるまま手足を切断されます。
血がブシューと出るような感じではないのですが、映画が始まって早々にショッキングなシーンでした。
ただ、アーレンがブリッジから脱出するまでがピークだったかもしれません…。
ゆっくりストーリーが進むので、飽きてしまいました。
(本当にごめんなさい。)
独特な世界観ですが、残念ながら作中で説明がほとんどないんですよね…。
もう少し世界観や設定の説明があれば、よりたのしめたかもしれません。
「閉ざされた世界で、それぞれの倫理観を持って生きる2つの集団」というメッセージ性はおもしろいと感じました。
あと、やるせないラストシーンがいいですね。
生きるためなら娘が可愛がっていたうさぎでも食べる。
ハッピーでもバッドでもないエンディングが本作にはぴったりだなと思いました。
映画『マッドタウン』の考察
映画『マッドタウン』で気になったシーンを考察しました。
考察1:「バッド・バッチ」とは?どういう世界観?
「バッド・バッチ(BAD BATCH)」とは、犯罪者や社会に貢献しない人々のこと。
ギャングや薬物使用者、不法移民など、「バッド・バッチ」とされる理由はさまざまです。
アーレンが「バッド・バッチ」になった理由は明かされていません。
「タイムマシンで過去に戻ってマシな人生にしたい」と言っていることから、荒れた生活を送っていたのでしょう。
「バッド・バッチ」と判断されると、フェンスで隔離された砂漠に放りこまれます。
そこは政府が関与しない無法地帯。
水も食糧も燃料も十分にありません。
有害物質を含む不法投棄されたガラクタの山があるばかりです。
「バッド・バッチ」たちは、この荒れ果てた砂漠でどうにか生きていかなければいけません。
ただし、世紀末のような世界はこの砂漠のなかだけ。
砂漠の外では文明的な生活ができるようです。
冒頭でアーレンを連れた職員たちが「早くクーラーの効いた部屋に戻ろう」と言っていることからわかります。
それまで快適に暮らしていたのに、「バッド・バッチ」と判断されると急に荒れ果てた砂漠に放りこまれるなんて、とても恐ろしいです。
考察2:荒廃した世界で相反する倫理観
砂漠で生活する「食人族・ブリッジ」と「薬漬け集団・コンフォート」は、それぞれの倫理観を持って生きています。
食人族・ブリッジ
人間を襲って拘束し、人肉を食べるブリッジ。
肉を長持ちさせるために、獲物の人間の腕や足から切りとっていき、なるべく生かしておきます。
もちろん手足を切りとる際は麻酔なし。
残虐極まりないと思われる彼らですが、家族を愛し、守ろうとする一面もあります。
ブリッジも好きで人肉を食べているわけではないのです。
もともとは、文化的な生活をしていた普通の人間ですからね…。
食糧も水も不足した厳しい環境で生き残るにはそうするしかないのです。
薬漬け集団・コンフォート
コンフォートの町では、労働さえすれば最低限の生活が保障されているようです。
食人行為はおこないません。
しかし彼らは薬漬けの状態で、ありもしない幻想を抱きながら生きています。
コンフォートの王に君臨するドリームは、町のインフラを整備し、食物を育て、人々の生活を支える重要人物。
ただし、人々を薬漬けにしている張本人でもあります。
人々にドラッグを与えるのは、荒廃した世界で生きる希望を与えるためなのでしょう。
考察3:アーレンはなぜコンフォートの外の世界を選んだ?
コンフォートでは薬漬けになりますが、少なくとも生きていくことはできます。
外に出れば、またブリッジに襲われるかもしれません。
それなのに、アーレンはなぜ外の世界を選んだのでしょうか。
それはマイアミマンがいるからだと思います。
もともとアーレンは、コンフォートの町でひとり過ごしていました。
マイアミマンと出会ったことで、彼の家族への愛情を感じます。
そして、アーレンも家族を守ろうとするマイアミマンのようになりたいと思ったのではないでしょうか。
アーレンはドリームから夢について聞かれ、「何かを成し遂げたい」と答えます。
ラストシーンで、アーレンはその「成し遂げる何か」を見つけたのです。
それは家族(仲間)を守ること。
アーレンは外の世界を選んだというより、マイアミマンを選んだと言ったほうがいいかもしれません。
もしマイアミマンがコンフォートの一員になるなら、きっとアーレンもコンフォートの町に残ったはず。
ひとりぼっちで心細く過ごしていたアーレンにとって、「家族(仲間)」はとても大きな存在だったのでしょう。
映画『マッドタウン』ネタバレ&考察まとめ
今回は、映画『マッドタウン』のネタバレ&考察を紹介しました。
混沌とした世界。極限状態。そこで見出した生きる理由。
倫理観とは何かを考えさせられる映画でした。
スローペースで話が展開していくので、のんびりたのしむのがおすすめです。