映画『サバイバー:生きるに値するもの/ラスト・サバイバー』のネタバレあらすじ&考察を紹介します。
文明が滅び、荒廃した世界。
よそ者を迎え入れたことをきっかけに、恐ろしい試練が幕を開け…。
「ヤー・アレフ」の目的とは?
ラストシーンの意味とは?
気になったシーンを考察しました。
作中でははっきりと描かれなかった謎が気になっている人は、ぜひ本記事を参考にしてください。
映画『サバイバー:生きるに値するもの/ラスト・サバイバー』の作品情報
原題 | The Worthy |
タイトル | サバイバー:生きるに値するもの ※DVD版では『ラスト・サバイバー』 |
監督 | アリー・F・ムスタファ |
脚本 | ヴィクラム・ウィート |
公開年 | 2016年 |
キャスト | サマール・アル=マスリ マフムード・アトラシュ ラキーン・サード サメル・イスマイル マイサ・アブドゥ・エルハディ ほか |
制作国 | アラブ首長国連邦 ルーマニア |
上映時間 | 99分 |
ジャンル | SF |
映画『サバイバー:生きるに値するもの/ラスト・サバイバー』のあらすじ【ネタバレなし】
文明が滅びた世界。懸命に生きる彼らが招き入れたのは、災厄の種でした。
戦争により文明は滅び、寒さと飢えと恐怖に支配された世界。
隠れ家で身を寄せ合って暮らす10人の男女。
ある日、リーダーのシュワイブが敵に襲われていたところ、たまたま通りかかった2人組が助けてくれた。
シュワイブは、命の恩人である2人を隠れ家へ招き入れることに。
しかし、それをきっかけに彼の仲間たちは次々と危機にさらされていき……。
映画『サバイバー:生きるに値するもの/ラスト・サバイバー』の感想【ネタバレなし】
映画『ソウ』のジグソウを彷彿させる仕掛けあり!ただし盛り上がりには欠けるかも?
普段なかなかお目にかかれない中東の映画です。
荒廃した世界観はとても雰囲気が出ていました。
作中では映画『ソウ』のジグソウのような凝った仕掛けが登場します。
さまざまな試練をどう乗り越えていくのかが見どころです。
CGが少々チープなのはご愛嬌。
少しグロめの描写があるので、苦手な人は注意が必要かもしれません。
ストーリー自体はいいのですが…。
全体的な盛り上がりにはちょっと欠けるかなと感じました。
以下、ネタバレを含みます
主な登場人物とキャスト
映画『サバイバー:生きるに値するもの/ラスト・サバイバー』の主な登場人物とキャストを紹介します。
シュワイブ(演:サマール・アル=マスリ)
隠れ家のリーダー。
世界が荒廃する前、預言者からの忠告を受け、古い飛行場を利用して隠れ家をつくりました。
困っている人を見ると放っておけないやさしい性格です。
イーサ(演:マフムード・アトラシュ)
シュワイブの息子。
まだ若いながらもリーダーシップがあり、仲間から信頼されています。
父親譲りのやさしい性格ですが、少し甘ちゃんなところも。
マリアム(演:ラキーン・サード)
シュワイブの娘。
敵の襲撃を受けた際は、隠れ家のなかで仲間をまとめる重要な役割を担っています。
父に内緒で隠れ家の仲間・ダウードと交際中。
ジャマール(演:アリ・スリマン)
隠れ家の仲間の一員。
頭脳派で、シュワイブの相談役。
感情論ではなく合理的に判断をするため、時には非情な決断を出すことも…。
ラヤ(演:ルバ・ブラル)
隠れ家の仲間の一員。
正義感の強い女性。
教師をしていた頃、犯罪者から生徒を助けようとして顔に塩酸をかけられた過去があります。
隠れ家の仲間・アイドリースとは夫婦です。
ムーサ(演:サメル・イスマイル)
シュワイブの命を救ってくれた男性。
その際にケガを負ってしまったため、助けてくれたお礼もかねて隠れ家へ招き入れることに。
ナイフを肌身離さず持っています。
グルビン(演:マイサ・アブドゥ・エルハディ)
ムーサと行動をともにするクルド人の女性。
クルド語しか話せないため、ムーサとしか意思疎通ができません。
映画『サバイバー:生きるに値するもの/ラスト・サバイバー』のあらすじ【ネタバレあり】
映画『サバイバー:生きるに値するもの/ラスト・サバイバー』のあらすじを結末までネタバレありで紹介します。
災厄の種
世界が荒れ果てる前、シュワイブは1人のヒッチハイカーの男を車に乗せた。
ヒッチハイカーはこう言った。
「世界の破滅が近い。生き残るためには、隠れ家でひっそりと生活するように」と。
シュワイブは彼を「預言者」と呼び、その忠告に従って古い飛行場に隠れ家をつくった。
その後、預言者の忠告どおり文明は滅び、飲み水の確保すら難しい状況になった。
隠れ家でともに生活するのは、シュワイブの子ども2人を含む10人の男女。
彼らは銃で武装し、交代で見張りをしながら、ひっそりと暮らしていた。
ある日、隠れ家の前に悪党が現れ、様子を見に行ったシュワイブが襲われてしまう。
ギリギリのところで助けてくれたのは、たまたま通りかかったムーサだった。
シュワイブは、命の恩人であるムーサと連れのグルビンを隠れ家へ招き入れることに。
隠れ家の仲間たちのなかには、彼らを警戒する者もいた。
特にマリアムは、「グルビンがムーサに怯えている」と感じ、彼らをかくまうことに反対するのだった。
嫌な予感は的中する。
その夜、ムーサがシュワイブを殺害したのだ。
ムーサは「俺はアレフであり、ヤーだ。価値のあるもののみ生き残る」と、意味深な言葉を残して姿を消した。
突然リーダーを失い、仲間たちは混乱状態だ。
試練のはじまり
翌日、イーサとグルビンは、隠れ家の蛇口から水が出ないことに気づく。
イーサは仲間のダウードとアイドリースを連れて、外の貯水槽を見にいくことに。
貯水槽にはムーサによって手榴弾の罠が仕掛けられていた。
爆発に巻き込まれ、アイドリースは死亡。
ダウードは右脚を失った。
貴重な水を失い、危機的な状況だ。
ジャマールは、生き残るには瀕死のダウードを見捨てるしかないと主張する。
しかし、イーサは仲間を見捨てたくない。
対立した2人は揉み合いになり、ジャマールはイーサに向けて銃の引き金を引く。
ところが、銃に弾は入っていなかった。
醜い本性が明らかになり、仲間の信頼を失って隠れ家から追放されることになったジャマール。
彼は「すぐにまた会おう」と捨てゼリフを残して、隠れ家を立ち去るのだった。
とはいえ、水を確保しなければ生きられないことは事実だ。
イーサ、カイス、ラヤの3人は隠れ家を出て、水を探しにいく。
訪れた廃墟で少量の水を発見し、ラヤが水筒に入れて持ち帰ることに。
廃墟を離れようとしたとき、ラヤが落とし穴に落下してしまう。
落下した先の地下室にいたのは、天井から吊るされたジャマールだった。
イーサとカイスも駆けつけ、ジャマールの身体を下ろすと、彼はうめき声を上げる。
ジャマールの靴のなかには金属片が入れられており、身体を下ろすと足に突き刺さる仕掛けになっていたのだ。
何が起こったのか聞き出そうにも、ジャマールは舌を切られていてしゃべれない。
足をケガしているので隠れ家へ連れて帰ることもできない。
イーサは悩んだ末、置き去りにするくらいならと、ジャマールを窒息死させた。
決着
その直後、ムーサによって地下室へ火が投げ入れられる。
イーサとカイスはなんとか脱出したが、ラヤは崩れた階段に足を取られて動けない。
彼女は最後の力をふりしぼって水の入った水筒を外へ投げると、炎に包まれていった。
悲しみに暮れる2人が隠れ家へ戻ると、建物の外に血まみれで倒れているグルビンの姿が。
イーサが慌てて中の様子を見にいくと、ほかの仲間は殺されていた。
奥へ進むと、首に鎖をかけられた状態で飛行機の翼の上に立つマリアムを発見。
イーサは翼の上に登って助けようとするが、近づきすぎると飛行機が傾き、マリアムの首が締まってしまう。
そこへムーサが登場。
もう片側の翼の上に立ち、「マリアムを救えるのはイーサだけだ」と告げる。
2人は激しい戦闘を開始する。
ただし2人が翼から落ちたり、マリアムに近づきすぎたりすると、彼女は死亡してしまう。
イーサは戦闘中もまったく気が抜けない。
そして、ついにイーサは翼の端に追い詰められてしまった。
このままだとイーサが殺される。
意を決したマリアムは翼から飛び降り、自ら命を絶った。
「これでお前は自由の身だ。終わりは始まりでもある」と怪しげな笑みを浮かべるムーサ。
怒りを抑えられないイーサは、隙をついて彼にアルコールを浴びせて火を放つ。
ムーサが息絶えたのを確認すると、カイスのもとへ戻るのだった。
結末
イーサが歩いていると、倒れていたはずのグルビンが現れる。
カイスは彼女に殺されていた。
混乱するイーサに彼女は告げる。
イーサとムーサのどちらを仲間にすべきかふるいにかけていた。
イーサには生きる価値がある。
崩壊した世界を立て直すため、マディーナの拠点で仲間たちと待っている、と。
そしてイーサの首に仲間の印を刻むと、その場を立ち去った。
その後、イーサはマディーナを目指して歩いていた。
道中で1人の老人と出会う。
彼は昔シュワイブが出会った預言者だった。
預言者によると、ムーサとグルビンは「ヤー・アレフ」という組織の一員だという。
その目的は、強いものを見つけ出し、世界を立て直すこと。
預言者もかつては組織の一員だった。
しかし、組織の価値観が変化しはじめたことに気づき、脱退したのだ。
仲間たちが「価値のあるもの」という言葉を使うようになったことが、脱退を決意したきっかけだった。
翌朝、イーサは預言者と別れ、再びマディーナを目指す。
「ヤー・アレフ」と決着をつけるために……。
映画『サバイバー:生きるに値するもの/ラスト・サバイバー』の感想【ネタバレあり】
ムーサとグルビンを迎え入れたことで事件が起こるのですが…。
しょっぱなから怪しすぎるムーサ。
隠れ家に迎え入れてもらったのに、なぜかシュワイブにケンカ腰です。
しかもやたらとナイフの扱い方が上手い。
ムーサによる試練は恐ろしいものばかりでした。
まずは貯水槽の爆破。
ダウードの手当てのために足を糸ノコギリで切り落としたり、熱したシャベルを押しつけたり…。
これは痛々しいシーンでした。
廃墟の地下室の仕掛けもエグかったです。
「また会おう」というジャマールの捨てゼリフがこんなかたちで実現するとは…。
靴のなかの金属片がまた痛々しい。
そして、ラヤが貴重な水の入った水筒をイーサたちに投げるシーンはグッときました。
気高く美しいラヤらしい判断です。
廃墟から戻ったイーサを待っていたのは、シーソーのように組み上げられた飛行機の翼の先端に立たされたマリアム。
助けようと近づいたらマリアムの首が絞まってしまうし、ムーサと闘わないといけないし…。
生き残れるのはイーサかマリアムのどちらか1人という状況です。
映画『ソウ』のジグソウっぽいなと思いました。
マリアムが自ら命を絶つのはなんとなく予想していましたが、やっぱり悲しいです。
ラヤもマリアムも悲惨な最期でした。
彼女たちのように心やさしい人間に生き残ってもらいたかったなと思います。
後述しますが、ラストシーンは理解が難しい部分がありました。
中東の価値観やイスラム教の知識が乏しいからかもしれません。
映画『サバイバー:生きるに値するもの/ラスト・サバイバー』の考察
映画『サバイバー:生きるに値するもの/ラスト・サバイバー』で気になったシーンを考察しました。
考察1:「ヤー・アレフ」とは?その目的は?
預言者によると、ムーサとグルビンは「ヤー・アレフ」と名乗る組織の一員です。
<ヤー・アレフとは?>
アラビア語で
- ヤー(ي)=「終わり」
- アレフ(ا)=「始まり」
→ヤー・アレフ=「終わりが来て、また始まる」という意味。
彼らの目的は、荒廃した世界を立て直すために価値のあるものを探すこと。
つまりムーサは、イーサたちが価値のあるものかを確認しにきたのです。
彼がシュワイブを殺害したとき、このように言っていました。
俺はアレフであり、ヤーだ。
始まりであり、終わりだ。
価値のあるもののみ生き残る。
この言葉は、ヤー・アレフの目的そのものだったのです。
一方、グルビンの目的は、イーサとムーサのどちらが強いかを確認することだったようですが…。
もしかしたら、ヤー・アレフにはいくつかの派閥が存在するのかもしれません。
考察2:ラストシーンの意味とは?
ラストシーンで「これは君の物語だ。終わったのは君の世界かもしれない」というイーサの語りがあります。
これは「ヤー・アレフに終わりのときが近づいてきている」という意味でしょう。
預言者によると、混乱した世界のなかでヤー・アレフの当初の目的を見失ってしまいました。
<当初の目的>
混乱した世界でも人間らしさを失わない強いものを探すこと
↓
<現在の目的>
価値のあるものを探すこと
たしかに、ムーサも「価値のあるもの」という言葉を使っていました。
荒廃した世界を立て直すには、人間らしい道徳観や倫理観が大切です。
そのため、当初は「人間らしさを失わないもの」を探していました。
ところが、次第に戦闘能力やリーダー性の高い「価値のあるもの」を探すようになります。
その結果、ムーサのように人間らしさが欠如した人間がヤー・アレフの一員になったのです。
現状では、ヤー・アレフは人々をふるいにかける優位な立場にいます。
しかし、人間らしさの欠如したヤー・アレフが世界を立て直すのは難しいでしょう。
力がすべてを支配する無秩序な世界になってしまうのは目に見えています。
そしてヤー・アレフの時代が終わったあと、また新しい誰かが世界をつくるはず。
次に世界を支配するのは、またヤー・アレフのような組織なのか。
それともヤー・アレフによってふるいにかけられた側の人々なのか。
結末は誰にもわかりません。
ちなみに、ヤー・アレフがいる「マディーナ」とは、メッカに次ぐイスラムの第2の聖地のこと。
預言者が登場したり、聖地が登場したり、イスラム色が反映されているのが興味深いです。
映画『サバイバー:生きるに値するもの/ラスト・サバイバー』ネタバレ&考察まとめ
今回は、映画『サバイバー:生きるに値するもの/ラスト・サバイバー』のネタバレあらすじ&考察を紹介しました。
荒れ果てた世界観と恐ろしい試練が魅力の本作。
少し物足りなさは感じるものの、緊張感があっておもしろかったです。
イスラム文化について知識があると、よりたのしめたのかなと思います。